
吉岡 徹
Yoshioka Toru
吉岡 徹
Yoshioka Toru
専門分野
アクリル画
「吉岡徹の作品は、まるで万華鏡のようだ」──フランスの権威ある美術誌『ユニベール・デザール』がそう評したように、彼の描く抽象は、光と色の迷宮の中に神秘の輝きを宿している。幾何学の詩情を纏いながら、観る者の心の奥にひそやかな揺らぎを呼び覚ますのだ。 東京藝術大学デザイン科を卒業後、渡米して現地のポップアートの潮流を吸収し、帰国後は広告デザインの世界で活躍。数々の受賞歴を重ねたのち、長きにわたり大学・大学院で色彩学と意匠学を教え、知の蓄積と美の精神を次代へと伝えてきた。 やがて自身の探求は、アクリル絵具による抽象へと結晶する。仏教をはじめとする多様な宗教観を背景に、束縛なき創造への渇望が彼を突き動かし、画布は精神を映す鏡となった。その画面には、光と色が幾重にも折り重なり、角度を変えるたびに新たな意識の断片が立ち現れる。まさに万華鏡のように尽きることのない表情を見せるのである。 代表作『回向/Parinamana』は、得た徳を他者へと分け与える仏教の行為を、華麗な幾何学と鮮烈な色彩で可視化した作品だ。渦巻く造形に引き込まれる体験は、まさに「徳が巡る」瞬間を体感させる。 吉岡徹の作品は、知性と感性の均衡が生み出す秩序に満ち、鑑賞者に心の浄化と静かな力強さをもたらす。幾何学と色彩を通じて精神の深みを描き続ける彼は、現代抽象の詩人としてその歩みを刻み続けている。



