“やさしさ”だけは、人の心を照らし続ける
ハンス・イヌメの作品に触れると、ふと心がほどけていくような、不思議なあたたかさに包まれます。
彼が描くのは、決して特別な存在ではありません。
鶏、豚、羊、牛──オランダの田舎に当たり前のように存在する家畜たち。
カエルやネズミ、ミミズや亀──人目を避け、ひっそり健気に生きる小さな命たち。
彼らは、人間と同じこの地球に生きながらも、注目されることも、敬意を払われることもなく、ただ静かに日々を過ごしています。
しかしイヌメは、そのひとつひとつの命にまなざしを向け、彼らも同じ地球に生きるかけがえのない仲間だと言います。 声なき声に耳を傾け愛情を込めて彼らを描きます。
「人が跋扈する中でひっそりと生きる命、そんな彼らを大切にしたい。」
そんな思いが作品にそっと染み込んでいるのです。