カイロより少し南の小さな村。水面に荷馬車が映っています。現地では至って平凡な風景です。コンクリートやアスファルトに囲まれ仕事と制作に忙しい作家にとって、遠く離れた国の取材は特別なものなのでしょう。何気なく目にした老人と荷馬車は水面のゆらめきのようにゆっくりで、時間の流れや空気の密度さえ違って感じられるのかもしれません。幼少期を長久手の田んぼに囲まれて過ごした記憶が甦り、この懐かしくも幻想的な景色を描いたのは必然とも言えるでしょう。 荷馬車以外は極力平面的にし、垂らし込み技法で強めに滲ませた影を印象的に表しています。 共シールあり。