【名画を語る~兒嶋画廊 歳時記~】児島善三郎

児島善三郎「残雪」1937年制作 44×59cm 油彩/キャンバス

 

田一枚一枚づつに残る雪 高浜虚子

 
 例年にない寒い朝が続きます。2月末に近いのに梅の蕾もかたいままです。小生の子供の頃は国分寺でもよく雪が積もりました。軽く30センチは積もります。家の横の急坂で橇遊びをしたり、スキーをしたり楽しい思い出が沢山あります。父が若いころ使っていたヒッコリーの一枚板の山スキーが蔵に残っていたので、ゴム長靴をヒモか縄でぐるぐるに巻いてやっと固定して、かんじきのような輪っばの付いたストックを短く持ってジャンプ台のような坂に挑みます。こう書いていると、その時の緊張感や恐怖が鮮やかに甦ってきます。そんなことを思い出しながらこの絵を眺めていると、雪の降った後の田圃は全くこの絵のままです。真直ぐ田圃の間を流れてきた野川が岩崎別荘の下付近で小金井方面に大きく蛇行するあたりを描いたものです。
 
畦道には雪が残りますが、湧き水は少し暖かいのか田表は薄氷をはったところや、シャーベット状になったところや、すっかり解けているところと様々です。薄氷は金つばの衣に似て昔ガラスのようです。その薄衣の下を水はちょろちょろと流れ、微生物たちは氷のステンドグラスに守られながら、春を少しづつ、少しづつ懸命に作りだしているように見えます。冷たい雪や氷でさえ場合によっては、雪洞やカマクラのように心地よい環境を作ってくれます。
 
つい最近のことですが、国分寺の湧水群と野川の環境や生態系を守ったり、考えたりする「おたカフェ水の学校」という活動をされている方々が画廊を訪ねてこられ、国分寺の野川とその両岸に広がっていた田圃をこよなく愛し、昭和11年から26年にかけてそこの四季を百点以上も描き続けた画家がいたということで善三郎をホームページ上で紹介してくれることになりました。没後50年を迎えた本年、九州、北海道で関連の展覧会が三か所で開催されます。
 
(2012年2月号)

 

  兒嶋画廊  


国分寺崖線の上に立つ藤森照信氏設計の丘の上APT(トタンの家)において、様々な展覧会活動や地域との共同事業を行う。児島善三郎作品をはじめとする日本の近代洋画、1960〜70年代の現代美術、藍染古布などのテキスタイルアート、縄文土器や土偶などジャンルを越えて私たちの日々の生活に活力を与えてくれる美的鑑賞物を展示販売する。
 
-作品のお問い合わせ先-
〒185-0024 東京都国分寺市泉町1-5-16
Tel/Fax:042-207-7918

 

 

  児島善三郎  

 
治以降の日本近代洋画を代表する作家の一人として、戦前、戦後を通して活躍する。特に「日本的洋画の完成」を目指し油彩画の基本に加え、南画や琳派、浮世絵の研究を重ね、大胆な様式化や絢爛なる色彩を駆使し「善三郎様式」と呼ばれる独自の世界を築いた。初期の人物画から松の木を大胆に取り入れた風景画、中期以降の豪華な盛り花や薔薇の絵など多くの人に今も愛され続けている。
その画業は独立美術協会のみならず画壇全体に大きな影響を残した。
近年は香港や中国のオークションにも優作が出品され、アジアの市場でも人気が高まっている。
 
 
 
 

 
 
■ 全文はこちらからダウンロード可能です。
 

 
 

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