【名画を語る~兒嶋画廊 歳時記~】児島善三郎 「菖蒲咲く頃」

児島善三郎 「菖蒲咲く頃」 10号 1948年 個人蔵
~野あやめの離れては濃く群れて淡し 水原秋櫻子~

1948 年(昭和23 年)作となっていますが、おそらく取材は戦前で、上半分の森の描き方を見ると1938年頃の表現に近いと思います。丸く囲った木の表現などは岡本太郎が描いた顔の絵みたいです。前年まで二年続けて、焦土と化した東京を逃れて北海道に新境地を求めたり、郷里の福岡や阿蘇に画題をたずね歩いたりした善三郎ですが、様々な価値観が目まぐるしく変わる中、旧作に手を入れながら来し方を見つめ直したり、自らのアプレゲールを模索していたのではないかと想像します。秋櫻子の句の中の難解なところも、そのような時代感を匂わせています。


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【児島善三郎】

明治以降の日本近代洋画を代表する作家の一人として、戦前、戦後を通して活躍する。特に「日本的洋画の完成」を目指し油彩画の基本に加え、南画や琳派、浮世絵の研究を重ね、大胆な様式化や絢爛なる色彩を駆使し「善三郎様式」と呼ばれる独自の世界を築いた。初期の人物画から松の木を大胆に取り入れた風景画、中期以降の豪華な盛り花や薔薇の絵など多くの人に今も愛され続けている。
その画業は独立美術協会のみならず画壇全体に大きな影響を残した。
近年は香港や中国のオークションにも優作が出品され、アジアの市場でも人気が高まっている。

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画廊歳時記をはじめたのは、人々の心と絵画の中に写し出される情景との間に共感する部分が少くなっているように感じれるように
思ったことがきっかけです。単純に言えば向井潤吉が描いたように藁葺き屋根の民家の周りに梅や桃の花が咲き洗濯物が干されている風景画が
最大公約数のように人々の郷愁を誘うということに抵抗を感じたからです。もちろん、それ自体は日本の風物をよく表しているに違いはありませんが、
画家がイーゼルを構え向う先にはもっと厳しい自然の姿や、人々の日々の労働を受け入れてくれる寛大な姿もあるはずです。
この、恵み豊かな大地に感謝と怖れを抱きながら、縄文時代から続いて来た自然との共生の姿を研ぎ澄ました短い言葉と、簡略化したフォルムで描き出した
近代の画家と俳人のエスプリを双方の愛好家に伝えて行ければと念ずるものです。実際の作業の中で驚くほど共通する場面に遭遇します。皆様方、それぞれの感性の中で
共感するものを発見してください。
 
兒嶋俊郎

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