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Interview: YUTO STUDIO

体温が1℃変化するような、心がホッとほころぶ猫作品を

“ 猫好きが高じて「猫作品」の作家に „

 
 


 
 

猫を描くのが好きで、現在は「猫に特化した作家」として活動中のYUTO STUDIO(ゆとすたじお)さん。
暖かな色合いと愛くるしい表情が印象的な猫の絵、石粉粘土の猫型オブジェ、オリジナル作品「髪型が猫」シリーズなど、幅広い。
作品はオンラインで販売したり、イベントへ出展したりと精力的だ。

 
 
「YUTO STUDIO(ゆとすたじお)という作家名の由来は、15歳の愛猫の名前『ゆと』から。あとは6歳の『ノア』がいます。
 
猫の居る暮らしの中で生み出される作品なので、主役はもちろん猫。絵を描いていると猫たちが寄って来て邪魔をするんですが、それも可愛くて仕方がないんです」
 
 

ゴッホやシャガールのような油絵に憧れ、絵画教室に通い始めたのは社会人になってから。

 
 
「当初、油絵は全くの未経験。
姉のお古の油絵の具を持参したんですが、ガチガチに固まっていて、絵が描ける状態じゃありませんでした。
初日はそれを剥離剤でひたすら溶かして終わったのも、今ではいい思い出ですね。
3ヶ月間通った教室は、とにかく自由でした。課題やテーマも決まってなくて、各々が描きたいものを自由に描いていい。
デッサンなどの技法を深く教わることもなく、いわば『油絵同好会』のような雰囲気。だからこそ、自分のペースで絵が描ける良い環境でした」
 
 
当時は猫ではなく、人間の絵をメインに描いていたYUTO STUDIOさん。
 
 
「ゴッホやシャガールのような油絵を描きたかったけれど、そこに自分の持ち味を出すのは難しい。

彼らのような油絵は描けないなと思い始めた時、ふいに愛猫をモデルに絵を描いてみたんです。

大好きな猫を描いている時は、自然体でのびのびとした心地で居られる…そこで気づきましたね。『あぁ、私は猫の絵を描くのが得意なんだ』って」
 
 
こうして2015年頃を皮切りに、猫の絵をどんどん描くようになっていった。
 
 
 

“ 作品を買ってもらえる喜びを経験 „

 
 


 
 

最初は趣味程度に描いていた猫の絵が、やがて身近な人の目に触れるように。

 
 
「姉が喫茶店をやっていたので、猫の絵や石粉粘土で作った猫のオブジェを、お店に飾ってもらっていました。
そうしたら、だんだんとお客さまが買ってくれるようになったんです。
それが嬉しくて、猫作家として真剣に作品作りをしていこうと思い始めました。
猫のオブジェは、なんとなく小物が作りたくなって粘土で作ってみたのが始まりです。
絵は生活に取り入れることが少ないですが、手作り感のある置物なら、ちょっとした手土産にもなりますからね。
ゆるいデザインなので、手に取ったお客さんはクスクス笑いながら買って行ってくれるんですよ」
 
 

猫好きが集まる喫茶店だったため、YUTO STUDIOさんの作品はたちまち人気商品に。
「うちの猫も描いて欲しい!」と、常連客からオーダーを受けることも増えていった。

 
 
「最初は喫茶店の中で絵やオブジェを売るだけでしたが、お客さんの主催する『保護猫のチャリティーイベント』へも誘われて、出展するようになりました。
自分の猫作品を見て喜んでもらえるだけでなく、保護猫の幸せにつながるかもしれない。それはそれは嬉しいことだし、これからも続けていきたいですね」
 
 

「猫」の良さや魅力とは何か?
 
そう尋ねると「邪念がないところ」と、YUTO STUDIOさんは答える。

 
 
「猫には『相手によく見られよう、可愛く思われよう』などという下心がありません。
自然体に、そして自由に、ただ自分の心地よさを追求しているように思えます。
そんな猫たちは、時に大切なことを思い出させてくれますね。
例えば猫の絵を1つ描く時でも、自分の感覚に酔ってはダメ。
『作品を評価されたい』『褒められたい』と、欲を出すと失敗するので」
 
 

そんな時は、日なたで気持ちよさそうに眠る愛猫の姿を見て、心を緩ませるのだそう。

 
 
 

“ よりポップに、面白おかしく猫を描きたい „

 
 


 
 

来月には大阪での展示イベント、チャリティーイベントでの出展を予定しており、お客さんの反応が楽しみだと語るYUTO STUDIOさん。
見どころは、人間と猫を融合させたオリジナル絵画「髪型が猫シリーズ」だそう。

 
 
「我ながら『良いものを思いついたな』と思っています。
人を描きたいけど、猫中心の絵しか描けない。
かといって、猫を擬人化するのはあまり好きではない。
そこで、ちょっと疲れた表情の人間と猫を融合させてみたんです」
 
 

顔は人間で、髪型は猫。
なんともユニークで、珍しい発想だ。
肌や目の色も独自の色使いで「人間の色はこうでなくてはならない」というしがらみも、そこには無い。

 
 
「変わった模様を描くのが好きだし、よりオモシロおかしい絵を描いていきたいですね。
作品にフランクさとポップな味わいをさらに出して、自分の技量を研磨していければ…。
そのために、今後はもうちょっと定期的に創作活動に励み、作品を増やしていこうと思います」
 
 

そう語るYUTO STUDIOさんが目指すところは「見た人の体温が1℃変化するような絵」を描くこと。

 
 
「忙しく過ごす毎日の中で、仕事で疲れたりストレスが溜まったりするだろうし、なかには思考が停止してしまう人もいると思います。
そんな人たちが見た時に、フッと力が抜けるような、詰まっていた息がほころぶような絵を描いていきたいんです。
体温は上がっても下がっても、今の膠着(こうちゃく)した状態からは解放される。
猫の絵やオブジェを見た人が、立ち止まって深呼吸して『もう少し、自分を緩めていいんだ』と気づくきっかけになれば嬉しいですね」
 
 

自然体に、ゆるやかに、のびのびと。
創作中は余計なことを考えず、インスピレーションを大切にしているそう。
 
そんなYUTO STUDIOの猫作品には誰もが心を癒やされ、自然と笑顔がこぼれるだろう。

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