日本文化を継承するアート販売Webメディア

Interview: 山口ミドリ

自らを表現できる画家を目指して

 

“ 無謀な挑戦でも…貫いたチャレンジの意志 „

若い時に絵を描きたい気持ちは持っていました。そもそも絵に関心を持ったきっかけは、兄がグラフィックデザイナーを目指していたのを見て「かっこいいな」と思ったこと。また、大友克洋さんや寺田克也さんに憧れ、イラストレーターになりたいと思ったことも大きかったです。

さすがに仕事にするのは難しいと思っていたので、結局はWEBデザインの仕事を15年ほどしていましたが、そこで将来についての行き詰まりを感じたり、仕事に対する情熱も湧かなくなってしまったりして…。そんな時に、「絵を描きたい」という若かりし頃の気持ちをふと思い出したのです。

特に専門的な知識は持っていませんでしたが、2年ほど絵画教室に通ったのち、仕事を辞めて専業の画家としてスタートを切ることを決意しました。私自身も無謀だとは思いましたが、一度きりの人生だし、チャレンジしたいという意志が勝ったのだと思います。

最初は手探り状態でした。始めた直後は「やっちゃったな…別に仕事を辞めなくてもよかった」という焦りや迷いもありました。ドキドキしながら画廊やギャラリーをまわり、作品を見てもらったり話を聞いてもらったりする機会も作っていきました。
何を描けばいいか悩んでいる私に、ひとりの画商さんが「風景画を描いてみたら?」とアドバイスしてくださいました。元々、登山などアウトドアが好きだったので撮り溜めた風景写真や、現場でスケッチしたものを絵にしてみようと思ったのです。

そうしているうちに初めて作品が販売になり、「私の絵に共感してくれる人がいる。続けていけば何とかなるのかもしれない」という希望が湧いてきたことを覚えています。

 

「Love Bird」–アトリエ21 モデラート展2024 展示作品

 

 

“ 頭で考えずに筆で考える „

絵は描きたいけど、何を描いていいかわからないという、シンプルながらキツイ悩みはつきまといます。ずっとその悩みに苦しんできましたが、最近は何を描こうということはなるべく考えず、キャンバスに向かったらとにかく手を動かすようにしています。不思議なもので、何かを描いていると、小さな思いつきの連続で絵ができてくるのです。

最初描こうと思っていたものとは全く違う作品ができるので、それがまた面白くて。計画通りにいかない、思いつきが転機になるという、絵を描くことは人生と少しリンクしている部分もあるんですよね。ある本に書いてあった「画家は頭で考えずに筆で考えろ」という言葉、まさにその通りだなとつくづく感じます。

もう一つ、絵が面白いのは競争などがないこと。絵については同じ景色を見ていても、描く人が違えば違うものになりますし、買ってくださる方の好みも十人十色で、見た人の気持ちや印象にゆだねられます。そんな争いがない世界なのも良いところだと思っています。

今は埼玉県の狭山に住んでいて、自然や公園が多くあるので、最近までは描画のためにお花を見るなどしていました。風景画を描くことがやはり多かったものですから。

ただ、何か自分の道を切り開くヒントが欲しくて昨年の春から秋ごろに、手持ちの油絵の参考書の著書である講師が運営する絵画教室に、片道2時間半かけて通ったのです。そこでは多くの生徒さんが人物画や静物画を問わず、自由にのびのびと取り組まれていました。教室にはエネルギーが充満しているようでした。

それを見て、絵は綺麗に描いたり、技術を磨くことだけがすべてではないのだと強く感じました。自分が描きたいものを描くことが今の私にとっても良いのではないかと、最近は人物画にも挑戦しています。

 

「私の心の中の鳥」–新槐樹社展・第68回(2024) 入選作品

 

 

“ わたしにとって描くことは「自分探しの旅」 „

最近では人物画を描くことが増えてきましたが、風景画をたくさん描いてきたことは、間違いなく作品の背景や世界観を出すことについての勉強になっています。今後のテーマにはなりますが、自然の美しい色彩と自分のイメージを合わせて、ファンタジックな要素を持った、“非現実的な世界”のようなものを描き出していきたいと考えています。

また『もっと自由に表現の幅を広げてみたい』という気持ちから、今年は公募にもチャレンジしています。7月までに4回出させてもらい、そのうち3回は入選することができました。来年もチャレンジしてみようと考えています。

自分の絵がどんどん変わっていく感覚がありますし、どんどん描いていくことで、まだ明確になっていない私の作風も固めていきたいと思っています。

多くの作品を描いてきましたが、自分が100%完璧だと思う作品は未だありません。もちろん、描き上げた時は良いなと思うのですが、今は1か月前に描いたものでも古く感じてしまいます。

自分自身がアップデートされているからというのもありますし、「もっと良い作品を描きたい」という強い意志があるからだと思います。内から湧き出てくるイメージを自分自身が見ていきたいですし、そのためにはさらに多くの作品を描いていくことが大事だと考えています。

そうやって成長していく、変わっていく私の作品を見ていただいたり、応援していただいたりしたら、これほど嬉しいことはないですね。

 

「あなたに花束を」–新槐樹社展・第68回(2024) 入選作品

 

戻る