渡辺洋子

“絵を描くことで地球を救いたいと本気で思っています。”
結婚、出産、子育てを経て、創作活動に情熱を傾ける渡辺洋子。


 
「おかしい人だと思うでしょう?」
そう笑う渡辺洋子さんは、千葉県野田市で工務店を営む家に生まれた。両親は忙しく、ひとりで過ごすことが多かった渡辺さんは、今の彼女を作り上げたというほど萩尾望都の漫画にのめり込み、建築の図面を見ては頭の中で立体化して遊ぶような子供だった。保守的な家庭で、美大に行きたいなどとは怖くてとても言えない。
短大の英文科を卒業後は証券会社に勤務し、のちに結婚。世間的に見れば順風満帆にライフステージを上がっているが、渡辺さんは絵の道を諦められなかった。

 
 
「どうしても絵を描きたかったんです。そこで27歳にして、美術研究所に通ったんですね。美大に入ることを目標に。3年ほど勉強したんですが、美大に進学することはあきらめて、自分でやろうと思いました。」
 
 
「自分と似た絵を見たことがない」と語る渡辺さんの絵は、油彩画のイメージを覆す独自路線の画風。美大でアカデミックな教育を受けていたらたどり着かなかったかもしれない。
 
 
「本物を見ないとダメだと色んな作品を勉強する中で日本画ばかり見てたんですよね。
油彩画より日本画のほうが構成がデザイン的な感じがして。一番よく見てたのは上村松園の日本画かな。
油彩画にはあまり惹かれませんでしたね。日本画って例えば着物の女性のラインがすごくきれいだったりするじゃないですか。密なところとスカッと空けた画面などデザイン性がかっこいいんですよね。松園の絵は色がきれいだったので 松園の色で学んで、という感じです。」
 
 
 

「切り離された気持ち」
デザイン的に構成された画面の中に魚を配置した作品

 
 
 
色使いがきれいで、ときにかわいいと評される渡辺さんの絵。描き始めたときから現在の個性あふれる抽象的な空想画だったという。

 
 
「自分では癒しだと思ってるんですけどね。初めての個展ではすでに抽象画を描いていたと思います。研究所では写実的なものを描くので、もっと色だけで抽象を描きたいと思ってたんです。それでその研究所をやめて自分でやっていこうと思ってから、抽象画を描きだしたんです。」
 
 
また度々ロボット風なモチーフが登場する渡辺さんの絵だが、デザインや構造の美しさという意味では昆虫の完璧なシンメトリーなども魅力だと言う。身の周りにある自然や宇宙、生き物などから着想を得ながらも、人工的な造形も好む。
 
 
「雲ってごわごわしてるじゃない?雲対人間の作った建築物の直線的な対比、かっこよすぎる!と思ったり。
そういうことを勝手に思って楽しんでます。」
 
 
 

「ある惑星のロボたち」
オレンジとブルーの組み合わせで、かわいい画面の中のロボットたち

 
 
どこまでも自由な発想で頭の中のイメージを描いていく制作スタイル。制作中は頭の中を空っぽにし、深海の音をBGMに流している。
 
 
「よく前世は魂が覚えているというじゃないですか。
私の魂はどこにいたのかなとかそういうことをずっと考えながら描いていると楽しい。
あるとき、海の中の音楽とかを聴いてやっていると自分がイルカみたいに自由に泳いでいるイメージが浮かんだりとか、あっ海だ!とか、そういうふうにいつも楽しんで描いています。」
 
 
 

「水の惑星で・・・4」
かっこよくカチッとした画面を意識

 
 
インタビュー中に渡辺さんからは何度も「楽しい」というワードが飛び出す。コロナ渦で仕事の忙しさから解放されたことも相まって、画家として油が乗り始めている時期のようだ。
 
 
「今までは生活もあるので、働かなきゃとずっと思っていたんです。
で、コロナで仕事が見つからないから、もういいや、働かないで絵だけ描いてようと思って、そこから絵だけに集中したら、今までがどれだけ中途半端だったかがわかりました。もう働くもんかと思っています(笑)
だって働いているとお洋服に気が行ったり、帰りは飲み会があったり、帰ってご飯を作らなきゃとか朝ご飯作らないと、
とか色々あるじゃない?今は、子供も成人して一番乗っています。これから!って感じがしています。昔から自分は60歳前後くらいからうまくいくかなと思ってました。
ただ、カラダとの闘いはありますけど(笑)」
 
 
こだわりは、色の使い方と構成とクスッと笑える要素。そして何よりも愛を込めることだ。
 
 
「一生懸命愛をこめて描いているんです。愛で地球を救おうと本気で思ってます。昔から木やアマゾンの森林伐採のニュースなんか見ると、心が痛くて。私の絵で地球を守りたいと思ったんですよね。地球に対する愛。おかしいと思われてもいいんです。地球をこの姿のまま保ちたいという気持ちを絵で表現しています。
自分にできることは絵なので、絵に愛をこめて伝える、それしかないと思っています。」
 
 
自然光で絵を描く渡辺さん。東向きの自宅での作業は朝が勝負だという。仕事から解放され、今は毎朝絵を描いている。
 
 
「天才となんとかは紙一重と言いますよね?あんな感じで、何と思われようが構わない、
とにかく絵だけ描いてればいいや、って。絵が描けて、食べていければいいと思っています。今はまだお金の心配をしないといけないけど、お金の心配なく、絵だけ描いていければと思っています。
あとは、できれば暖かい場所に住みたい。1年中ビーチサンダルでいられるような。」
 
 
 

「青い人魚」
娘を思いながら描いた人魚

 
 
 
渡辺洋子にとって”アート”とは?


 
「     愛      」
 
 

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