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Interview: 桶田仁美

まるで絵の具箱のような彩(いろどり)にあふれたキャンバス。
じっと見ていると心の奥底から力が湧いてくる。

作品『誕生 BORN』 2021年制作


「子どもの頃からいろんな色を使うことが好きでした。クレヨンだったら全色使っちゃうんです。
クレヨンって大抵一つの箱の中で、よく使う色とほとんど使わない色があって、長さがでこぼこになりますよね。私の場合、揃って綺麗になくなっていました」

 
 
画家であり、そしてカラーセラピストの資格をもつ桶田仁美さん。彼女のファンは絵を通して元気をもらっている。
 
 
「主に油彩…油画を描いているのですが、油絵具だけでなく、金箔を貼ったり、ラメ加工したり。カラフルにポップに作り上げています。
アクリル画も描いています。アクリル絵の具は蛍光色など明るい色が多く、私の作品と相性がいいですね。
油画は乾かすのに時間がかかるし、絵の具を重ねて重ねてやっと作品が出来上がる…手間はかかりますが、厚みや雰囲気が出るので、展覧会などには油画で参加させて頂いています」

 
 

作品『Holy Night』 2021年制作


 
 
桶田さんの作品は、具象画、抽象画、心象画…とジャンルは様々。
またテーマやモチーフも多岐にわたる。
 
 
「自分の得意なものだけに囚われないようにしています。
アートや芸術がよくわからないという人にでも、ぱっと見て「なんかいいな」「可愛いな」「ちょっと元気が貰えるな」など、何か感じてもらえる作品を作ることをテーマにしているんです。
人物画の方が魅力的に感じる方もいらっしゃいますし、抽象画の方が心に響く方もいらっしゃいますから」

 
 
強いて挙げてもらうと、動物を描くのが好きだと言う。
桶田さんの描く動物は、生命力にあふれ、力が漲っている。
そして、明るくカラフルな中にインディゴブルーが使われていることに気付く。
 
 

作品『sunshine』 2021年制作


 
 
「カラフルな色をより引き立たせるために、インディゴブルーをよく使います。
でも黒は使いません。自然界に存在しない色なので使うのは避けるよう、絵画教室で小さい頃から教わってきました。夜空も決して真っ黒ではない。よく見ると少し青かったりちょっとピンクだったり。よりリアリティを求めて自然の色を使うように心がけてしています。他の色を暗くしたいときに混ぜることはあるけれども、黒そのものでは使うことはないですね」

 
 
桶田さんが絵を描き始めたのは3才の頃から。家の近所で画壇の重鎮である画家夫妻が教室を開いていた。教室の決まりで水彩画で基礎を学び、10歳から油画を始めた。今もなお師事している。
 
 
「一般的に絵画教室では「見たものを写実的に描くためにはどうしたら良いか」というところから始めると思うのですが、その教室では初めから好きなものを描くように言われました。毎回毎回好きなものを描いて、自分の中の世界をより表現するにはどうしたらよいかという指導を受けてきたんです。好きなものを描き続けているのですから、絵を描くことを嫌いになることは一切なかったですね」
 
 

作品『歩み』 2021年制作


 
 
高校卒業後は4年制大学の文学部に進学。美術の教員免許を取得したものの一般企業に就職した。その後2回転職。プロとして活動を始めた今でも会社員を続けている。
 
 
「始めは、絵は趣味で続けていくだけでいいと思っていたんです。毎年教室の展覧会もありましたし、そこで発表するだけで満足でした。
しかし、2018年に先生が出品する展覧会に、弟子として一緒に出品させると言われて、外に初めて作品を出すことになったんです。
世界が違うと感じました。
いっぱい時間をかけて、これ以上のものはないと思って出した自分の作品が、プロの方々に囲まれているのを見たときに「インパクトが全然足りていない、自分の色が出せていない…」と痛感したんです。
で、「もっとできるはず…」って。負けず嫌いなところがあるので(笑)」

 
 
それが、桶田さんがプロとして歩みだしたきっかけだった。
絵を描く時間が増えていき、比例して絵の仕事も増えて忙しくなった。
会社勤めも絵に役に立つ仕事を求めて、ご縁のあった染物会社に転職。色々な染料や顔料を使うので、自分の知識として蓄えられたらいいなと思ったそう。
コロナ禍のステイホーム中には「カラーセラピスト」の資格をとった。
 
 
「「画家」という資格はないので、何か形にしたかったんです。画家であることで役立てる何か。色彩検定もあるとは思うのですが、それは自分の技術に役立つもの。そうではなくて、人に何かを与えることに生かせる資格を探したときに、カラーセラピストを見つけました。
コロナ禍で、精神的に暗い気持ちになる人が多かった。少しでも絵で元気に出来たら…という想いで、資格を取りました」

 
 
「カラーセラピスト」とは、色で心を癒すスペシャリストのこと。色で人の心に寄り添いストレスを和らげる。
似合う色を診断する「カラーアナリスト」とも、色に関する知識や技能を問う「色彩検定」とも違う。
 
 
「絵を買う方はどこに飾るかを決めて買われる方が多いと思うのですが、「カラーセラピスト」の勉強をしてからは、「こういう色だったらこういうところに飾るといいですよ」というお勧めができるようになりました。逆に、ただ家に飾りたいけれどどこに飾ろうかという方には、セラピー的観点から「ここに飾ると癒される効果が強まりますよ」とか、「温かい空間になりますよ」というアドバイスもしています。
結果、リピーターが増えましたね。その時の季節や気分に合った作品、小さい作品も含めて何度も買って頂けるようになりました」

 
 

作品『someday my princes will come』 2021年制作


 
 
「世間一般に、絵画って敷居が高いとか高級というイメージを持つ方が多いと思うんです。だからこそ、誰でも購入し手元に置けるものにしたいので、小さな手頃な価格のものも作成するようにしています」
 
 
桶田仁美にとって“アート”とは?



 
「人生に着色」

絵があることで普段の生活もより楽しくなったり明るくなったりしますよね。ARTは人生に彩(いろどり)を加えるものだと思います。

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