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Interview: KURUMI

カラフルにポップに 未来を見つめ唯一無二の線を描く


 
 

“ 動物の生命力と大地のエネルギー „

 
大地から突き上げる数多(あまた)の線。空には雲が浮かび、主題として描かれる動物は真っ直ぐに左を向く。
これら全てが、何十色ものアクリル絵の具でカラフルに描かれている。
この構図と色遣い、一目でこの画家の作品だと分かる強烈な個性を放つ。
明るくポップな作品を生み出す画家、KURUMIさん。現役の大学生である。

 
 
「昔から動物が好きなんです。今は犬2匹とインコ2匹を飼っています。子どもの頃に病気で入退院を繰り返した時期があったのですが、家に居た動物たちが辛い気持ちを和ませてくれたんです。動物は言葉は話せないけれど人を笑顔にする力がある。それで動物を描こうと考えるようになりました。左を向いているのは、正面だとありきたりだから。個性を持たせたいんです。まっすぐに突き進むイメージ。決して後ろは振り向かない。
地面から垂直に伸びる線は、動物から感じる生命の力や大地のエネルギーを表現しています。
動物と雲のバランスも、普通なら動物がもっと小さくて、雲がずっと上にありますよね。でも、動物と雲を近づけて描くことで、動物の大きさや、オーラ、存在感を表現したいと思って。鳥…特にモデルはなくて架空の鳥なのですが、これも対比を見せるために必ず描き込んでいます。」
 
 
垂直の線はまっすぐのようで、よく見ると曲がっていたり、太さも違っていたり、長さもまちまち。筆致に何か秘められたパワーが感じられる。実はこの線、“重力”という自然の力を使って描いているのだ。キャンバスを逆さに立てその縁に筆を置いて絵の具を垂らし、その流れが自然に止まるのを待つという斬新な手法だ。画家の思惑にプラスαの力が加わる。
 
自分の個性とは何か。試行錯誤を繰り返し今のスタイルが確立したのは、約1年前。きっかけは、日本テレビの番組「誰も知らない明石家さんま 第3回明石家さんま画廊」への出演だった

 
 


 
 

“ 「明石家さんま画廊」への出演が転機に „

 
「明石家さんま画廊」は、タレントの明石家さんまさんが画商となって、まだ世に出ていないアーティストを自らプロデュースするというプロジェクト。一般公募で選ばれた画家の作品を、実際に展示会を開いて販売する人気企画だ。KURUMIさんは2021年12月に放送された第3弾に応募。約5000点の中から選ばれて、16人の画家の1人として番組に出演することに。展示販売会には、さんまさんからアドバイスを受けて描き下ろした作品も加え、2点出展した。
 
 
「第2弾の放送をたまたま視ていたんです。あ、こんなのあるんだ…応募してみようかな…って。感覚的にはコンクールに参加するような感じでした。
でも、これが大きな転機となりました。画風もずっと試行錯誤の繰り返しだったのですが、さんまさんに気に入って貰えたことで自信が持てるようになり、今のスタイルが確立しました。
それに、初めて自分の作品が売れたんです。買ってくださったのはコレクターの方でした。「しっぽに躍動感があって気に入った」と。とにかく凄く嬉しかったです。
プロとしてやっていく覚悟が決まり、これからもっともっと頑張ろう!という気持ちになりました。」
 
 
制作にかかる時間はF8号(455×380㎜)の作品で、8時間くらい。大きめのF15号 (652×530mm)だと20時間以上かかるという。
ただしこれは構成を練り始めるところから含めた時間で、一般的な絵画制作と比べると、かなりスピーディーな印象だ。

 
 
「感覚が勝負なんです。描こうと思ったらいつでも描けるわけじゃない。ふとアイディアが浮かぶ瞬間があって、それを受けて描き始めるんです。一回筆を握ったら描き続けないとならない。途中で止めると描けなくなるんです。だから一気に描きあげてしまいます。」
 
 
それからの半年で描いた作品は100点を超えた。
 
 


 
 

“ 真っ直ぐな瞳の先に夢は果てしなく広がる „

 
KURUMIさんは現在大学4年生(2022年現在)。地元の一般大学に進学し、芸術学部で日本画を専攻している。
 
 
「小学生の頃水彩画を習っていたのですが、その教室は少し変わっていました。普通下描きは鉛筆でするじゃないですか。そこは墨汁と筆を使って下描きをするんです。やり直しが出来ないわけです。その経験から、失敗を恐れないということを学んだと思います。
高校では芸術系のコースを選択し、様々なジャンルに触れましたが、日本画だけ経験がなかったんです。そんな中、ある美術展で日本画の優しい表現に魅せられて、やってみたいなと思うように。それで大学では日本画を専攻しました。」
 
 
KURUMIさんの画風は日本画とはかけ離れているようなイメージを持つ方もいると思うが、一般的に日本画とは日本古来の墨や岩絵の具などの画材を使って描いた絵画と解釈される。KURUMIさんの描く日本画はアクリル画の作品同様に、やはり色とりどりでとても力強い。日本画の色彩感覚や繊細さを学ぶことで、アクリル画の表現にもとても役に立つという。
 
今後もアクリル画と日本画の両輪で活動していきたいというKURUMIさん。

 
 
「実は絵と同様に歌うこともとっても好きで子供の頃から声楽を習ってたんです。自分の感性を信じ、より表現力を高めるために今でもボイストレーニングに通っています。Superflyのようなカッコいい歌を歌いたくてオーディションを受けたりしています。」
 
 
目を輝かせながら夢を語るKURUMIさん。彼女の描く動物と同じ目だ。前にあるキラキラとしたものを見つめ、輝かしい未来を信じてまっすぐ進んでゆくその姿。KURUMIさんそのものを投影しているように見える。
 
 
「忙しい毎日だけれど充実して楽しいので頑張れます。いずれは海外進出も出来たらいいなと…」
 
 
夢は果てしなく広がる。

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