「写真詩家としての活動は、2017~18年ごろよりスタートしました。はじめはスマートフォンで写真を撮影し始め、その後に現在のかたちに至ります。詩については、大学の文学部で詩人・吉増剛造さんの授業を受けていたことが影響しているのかな……と感じています。三島由紀夫『金閣寺』のほか、小説や日本の古典文学を中心に読む授業で、とくべつ詩作に特化したものではありませんでした。”作品を通して感性を磨く”という内容の講義だったと感じています。大学生当時には気がつかなかったことに、現在写真詩を制作するうえではっと気がつくこともありますね」
小石川さんは、ご自身が撮影されたお写真に独自の詩を組み合わせた作品を発表される”写真詩家”として活動している。写真と詩を組み合わせた新しいタイプの作品については、幅広いフィールドへの興味を持たれる好奇心と関連しているのではないだろうか。素敵な笑顔で気さくにお話をしてくださった今回のインタビューでは、自身の作品にかける思いのほか、小石川さんの幅広いアーティスト活動についてもお話を伺うことができた。
「そのほか、国立市にある”ギャラリー国立”という場所で、企画運営やSNS用画像の作成を担当しています。入場無料のギャラリーで、近くの小学校の生徒さんたちが下校中にふらりと寄ってくれるような場所です。小さいお子さんの感性はすごく素敵で興味深いうえに、そうした感性をたっぷりと語って聞かせてくれるんですね。彼らの話を聞いている時間がとてもすきで、大人になっても手放したくないものについて考えるきっかけにもなります」
「Instagramに発表している「聖人じゃない」という写真詩は、2025年のバレンタイン間近に発表したもの。ピュアなかわいさもあるけれど、欲望や悶絶などと決してきれいなばかりではない人間のこころについて書きました。組み合わせている写真は小花にフィーカスしたものです。花ってそのままでもきれいですよね。なので、詩を組み合わせないタイプの撮影写真モデルとしてもよく取り扱っているんです。息抜きに撮っている植物の写真を投稿する専用のInstagramもあります。今回の赤い花の写真は、はじめはそちらのアカウントに掲載していたもの。花の写真アカウントの中からイメージ似合ったものがあれば写真詩のアカウントほうでも使うことがあり、今回もバレンタインの制作の際に、詩と組み合わせてみました」
写真詩ばかりではなく写真も発表されているという小石川さん。息抜きのようにたのしく撮影されているそうだ。実際に「聖人じゃない」の写真も、ぽっと芯のある華やかさを魅力とした美しい一輪の花にフォーカスされたまっすぐな印象の1枚を活用されている。バレンタインをテーマと聞くまではもっと違ったイメージを抱いていた筆者は、小石川さんの制作秘話を聞くのに夢中になってしまった。続いては「HOT」という作品についてお伺いする。
「モノクロのすすきの写真と組み合わせた写真詩「HOT」は、”そろそろ自動販売機にホット(あたたかい飲み物)が増えてきたな〜”と思って書いたものです。あたたかさよりも秋や涼しさを連想させる写真をあえて選んだのは、物事を感覚で、俯瞰してみたいから。なので例えば”ホットドリンクの写真”のようなそのまんますぎる題材ではなくて、この写真を選びました」
「わたしの根底には”幼少期の風景や景色を忘れたくない”という気持ちがあります。ギャラリー国立に足を運んでくれる小さなお子さんたちの話を聞くのがすきなのも、そうした想いと繋がっているかもしれません。さまざまな気持ちを忘れずに、そして大切に、今後も過ごしていきたいなと思っています」
ポータブルスキル抜群の小石川さんは”書籍を出版したい”という夢も叶えられたという。素敵なお写真のカラー印刷と、それに対応する詩が見開きで掲載されているという写真詩集『らいふ』についてもご紹介をいただく。販売の期間が定められている書籍のようなので、小石川さんの作品集をお手元に希望される方へは、ぜひお早めのご注文をおすすめしたい。
「2021年に自著『らいふ』を発売しました。”わたしはこういうことをしています”と明確な何かを持ちたかったほか、”作品を形に残したい”という思いがありました。SNSで発表してきた写真詩をもとに、撮り下ろし作品も掲載しています。Amazonのほか全国の書店で紙書籍、オンラインで電子書籍をご購入いただけます。出版社さんとのご契約の兼ね合い上、2026年2月に販売が終了となる予定ですので、それまでにより多くのお客さまにお手にとっていただければ嬉しいです。2025年夏にかけては6/6-6/9にアルフォンス・ミュシャ生誕165周年記念「-The Four Seasons- Japanese Art Exhibition in プラハ」マネス・エキシビション・ホール (チェコ・プラハ) 、6/20-6/22に写真展ECHO京都市京セラ美術館(京都府京都市)で展示があります。よろしければぜひ足をお運びください!」