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Interview: 嶋村有里子

嶋村有里子 第1回始弘賞受賞記念展に寄せて「ー深い森の奥へー」

 

簡単に自己紹介をお願い致します。

 


嶋村有里子です。静岡県・浜松市出身です。
 
油彩を制作の主軸としながら、“ImageMaker”として音楽イベントや舞台美術にも関わっています。
日本大学芸術学部美術学科絵画コースを卒業し、卒業後は研究室の助手として勤務しながら制作を続けていました。
その後文化庁新進芸術家海外派遣制度で、スペイン・バルセロナに滞在し、帰国後はギャラリーや美術館を中心に作品を発表しています。
現在は日本大学芸術学部美術学科非常勤講師、立軌会、ヴェロン會の同人でもあります。  

 

文化庁新進芸術家派遣研修員としてスペイン・バルセロナに渡西されていたようですが、どのような経緯で絵の世界に?

 
小さい頃からずっと絵を描くのは好きでした。祖父は美術教師でしたが、美術に限らず習字や読経など、日常の中で自然と身につけていくような教えがありましたね。感性が大事、とよく言っていました。
浜松出身なのですが、遠州灘という海がありブラジルからの移民の方も多く、ラテン気質が強いです。
研修先にバルセロナを選んだのは、やはり海があるのが大きかったですね。地中海の深いブルーの近くで暮らしたかった。スペインの光と陰影の濃さも魅力的でした。
 

作品にはどのような想いを込めていますか? 

 
油絵の具のもつ素材の力強さ、色彩の美しさを活かし、モチーフの持つ生命力を最大限に抽出したいと思っています。
平面絵画なので、パッと見た時に目が弾かれないように。観ていると自然と画面に吸い込まれるような視覚への心地良さを求めています。
描かれている内容や個人的な想いというよりも、素直な形を描くことを大切にしています。
 

“ImageMaker”として音楽イベント、舞台美術や空間演出のアートワークでもご活躍されていますが、その時の心情や、心に残っている出来事などお聞かせください。

 

憧れのアーティストと関われる仕事なので、全てが刺激的です。
プレッシャーもありますが、世界中の様々な表現者と作品を通して繋がれる事に喜びを感じています。
 
印象に残っている出来事は数え切れないほどあるのですが、中でもブラジルの巨匠、エルメート・パスコアールバンドの舞台美術を担当した際には、彼らの普段の表情や止むことのない音楽に触れ、日常の全てが表現に繋がることを教えてもらいました。

 
 

嶋村さん独自の色彩やうねり、重なりを生み出す工夫やこだわりなどはございますか?また、作品を作る上で大切にしていることはありますか? 

 
混じり気のない質の良い絵の具、身体に馴染む道具を使うようにしています。ナイフや筆は自分の使いやすいサイズに作り変えることもあります。
私の作品は、何年も完成しないこともあれば、一瞬で勝負が決まるような場合もあるので
その一瞬を見逃さないよう、なるべく毎日手を動かして瞬発力を培っています。
作者の思惑を超えて絵が勝手に動き出して、時には崩壊することもあるのですが、、不確定の要素が絵を面白くしてくれるので、なるべく受け入れて突き進むようにしています。
それが独特のうねりや重なりを生み出しているのかもしれません。
 

画家として最もうれしかった時、最もつらかった時は?

 
つい先日始弘画廊さんより、第1回始弘賞を頂いたことです。
始弘画廊さんの展示空間には学生時代からずっと憧れていたので、このような機会が頂けてとても嬉しく思っています。
受賞のご連絡を頂き、言葉にできない想いが言葉以上に伝わっている、ということにじんわりと感動すると共に、絵画の持つ可能性を改めて感じています。
つらいというよりは、単純に絵を描く時間が人生において全体的に足りないことでしょうか。常にもどかしさを感じています。
 

今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。また、そう思う理由なども教えてください。

 


 
「白い花」というF0号のガラス絵です。
初めてのガラス絵で、やり方がよくわからなくて焦って押しつぶしてしまったのですが、それがかえって面白いマチエールになりました。
小さい作品ですが強さもあって、激しくて透明な青を閉じ込めたような感じがいいですね。ガラス絵なので、中に生きものがいるような感じがして、、、
時々絵から視線を感じて、ビクッとします。
 
 

 

最後に、展覧会や今後の作品制作に向けての想いをお聞かせいただけますか?

 


この度、第1回始弘賞を頂き、9月28日(月)から10月10日(土)まで、表参道の始弘画廊にて受賞記念展・嶋村有里子展「-Deep Forest-」を開催することになりました。(※詳細は下記リンク参照)
油彩の新作を中心に、20点ほどの展覧会になります。
会場の始弘画廊さんは、半地下の中庭に面した心地よい空間です。会場が混み合う場合はパティオ(中庭)でお待ちいただくこともできます。
会期中無休で開廊しておりますのでぜひお出かけください。
また、今後の活動としては、東京都美術館での第73回立軌展(10月31日~11月8日)を予定しています。(※その他の展覧会は残念ながら全て中止となってしまいました。)
私にとって絵画は、自分の内面を深く掘り下げる作業です。
そのために必要な環境を整えて、今後とも益々旺盛に自分らしい独自のフォルムを追求していきたいです。

 
 
 
[su_heading size=”14″ align=”left” margin=”10″]若手作家の活動を支援。 
審査員に寺田農氏・土方明司氏「第 1 回 始弘賞」嶋村有里子氏が大賞に決定 9月28日(月)より受賞記念の個展を開催
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※画像をクリックすると詳細が開きます。
 
表参道に長年ギャラリーを構え日本画壇を支える有力な画家たちの展覧会を企画・開催してきた始弘画廊(代表:平山幹子)。常に画家達を支え、ともに活動を続けてきた始弘画廊は開廊から 33 年を迎え
た。昨今の新型コロナウイルスの影響で展覧会の開催もままならぬ状況の中、始弘画廊は日本の文化の発信に貢献し、精力的に制作を続ける若手作家の活動を支援するために「始弘賞」を創設した。7月26日には俳優の寺田農氏と平塚市美術館館長代理の土方明治氏、始弘画廊の平山幹子・平山俊信による審査が行われ、第 1 回始弘画廊大賞に嶋村有里子氏(1979 年、静岡県生まれ)が決定した。嶋村氏は油彩画を中心に作品を発表する傍ら、舞台美術や空間演出、装丁など幅広い活動を展開している。大賞の嶋村氏は正賞として9月28日から始弘画廊企画での個展を開催するとともに、副賞として100万円が授与される。

 
 

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